女王ラーメン
所用で友人と晴海方面へ歩いていたが、途中で『女王ラーメン』という看板の店に出会す。
別にどうということはないラーメン屋だが、看板だけが黒字に真っ赤な文字で書いてあり、とにかく目を惹く。
肝心の店内は、まだ営業時間前ということもあり、窺い知れない。
「ど、どんな店なんでしょう? ちょっと寄って行きましょうよ」
友人は興味津々といった風情で私の袖を引く。
「でも開店までだいぶあるみたいだよ。それに今日来たのは……」
「大河内さんっ!」
彼はさらに強く私の袖を引っ張る。
「もしかしたら、いや仮に、仮にですよ、これは単なる予想……というか希望的観測なんですが」
「回りくどいな、なんだよ?」
「女王様がライトがペカペカ輝くゴンドラに乗って下りてきて『よくお出でになりましたね』とか言いながらラーメンとか手渡してくれたら、楽しいじゃないですか」
私は呆れた。
「結婚式じゃあるまいし、なんでそんなことして現れるんだ」
「じゃあラッパのファンファーレで登場でもいいですよ、この際」
恩着せがましく妥協案を出す彼に、私は再度呆れる。
「どの際だ。外から見ただけでも、このラーメン屋でそんなことできそうにないだろう」
「じゃあこういうのはどうでしょう」
なぜ彼はここまでこの店を擁護するのか? 私の疑問を余所に彼は続ける。
「ここは傷ついた兵士達の野戦病院で、女王陛下におかれましてはもったいなくも、その慰問にラーメンを持って、手ずからラー……」
「しっかりしろ!」
事、ここに至り、私は彼の肩を強く揺さぶった。
「ここは『ラーメン女王』じゃない『女王ラーメン』だ!! ラーメンの女王なんていないんだ。あるのは女王だかのラーメン、あくまでもラーメンなんだ!!!」
強く、私の袖を掴んでいた彼の手から力が抜ける。
「そっか……そっスよね……」
落胆した彼の表情に、私は言い過ぎたかな、と思った。友人のこんな表情を見るくらいなら、何が女王なのかは得体が知れないが、たかがラーメンぐらい付き合ってやれば良かったかもしれない。
許せ、友よ。お詫びに今日の昼食は私が奢るよ。
※実は半分実話。東京晴海に確かに『女王ラーメン』はあった。今もあるかは不明だが、今になってとても気になっている。やはりあの時、彼の言うとおり入ってみれば良かったかも知れない。
別にどうということはないラーメン屋だが、看板だけが黒字に真っ赤な文字で書いてあり、とにかく目を惹く。
肝心の店内は、まだ営業時間前ということもあり、窺い知れない。
「ど、どんな店なんでしょう? ちょっと寄って行きましょうよ」
友人は興味津々といった風情で私の袖を引く。
「でも開店までだいぶあるみたいだよ。それに今日来たのは……」
「大河内さんっ!」
彼はさらに強く私の袖を引っ張る。
「もしかしたら、いや仮に、仮にですよ、これは単なる予想……というか希望的観測なんですが」
「回りくどいな、なんだよ?」
「女王様がライトがペカペカ輝くゴンドラに乗って下りてきて『よくお出でになりましたね』とか言いながらラーメンとか手渡してくれたら、楽しいじゃないですか」
私は呆れた。
「結婚式じゃあるまいし、なんでそんなことして現れるんだ」
「じゃあラッパのファンファーレで登場でもいいですよ、この際」
恩着せがましく妥協案を出す彼に、私は再度呆れる。
「どの際だ。外から見ただけでも、このラーメン屋でそんなことできそうにないだろう」
「じゃあこういうのはどうでしょう」
なぜ彼はここまでこの店を擁護するのか? 私の疑問を余所に彼は続ける。
「ここは傷ついた兵士達の野戦病院で、女王陛下におかれましてはもったいなくも、その慰問にラーメンを持って、手ずからラー……」
「しっかりしろ!」
事、ここに至り、私は彼の肩を強く揺さぶった。
「ここは『ラーメン女王』じゃない『女王ラーメン』だ!! ラーメンの女王なんていないんだ。あるのは女王だかのラーメン、あくまでもラーメンなんだ!!!」
強く、私の袖を掴んでいた彼の手から力が抜ける。
「そっか……そっスよね……」
落胆した彼の表情に、私は言い過ぎたかな、と思った。友人のこんな表情を見るくらいなら、何が女王なのかは得体が知れないが、たかがラーメンぐらい付き合ってやれば良かったかもしれない。
許せ、友よ。お詫びに今日の昼食は私が奢るよ。
※実は半分実話。東京晴海に確かに『女王ラーメン』はあった。今もあるかは不明だが、今になってとても気になっている。やはりあの時、彼の言うとおり入ってみれば良かったかも知れない。
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